シェーグレン症候群の症状といえば、まずドライアイやドライマウスを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、患者さんが日々感じている大きな苦痛の一つに、病気と密接に関わる強い倦怠感や慢性疲労があります。
この疲れは、単なる「だるい」というレベルではなく、横になって休んでもなかなか改善しないのが特徴です。そして、実はこの倦怠感は、ストレスと深く結びついています。
なぜシェーグレン症候群はストレスで悪化するのか?
シェーグレン症候群が自己免疫疾患である以上、体の免疫システムは常に緊張状態にあります。この状態で、さらに精神的・肉体的なストレスがかかると、症状が悪化しやすいメカニズムが働きます。
1. 自律神経の働き
強いストレスを感じると、私たちの体は交感神経が優位になります。交感神経は、唾液や涙の分泌を抑えるように働くため、もともと分泌量が少ないシェーグレン症候群の患者さんの場合、乾燥症状(ドライアイ・ドライマウス)がダイレクトに悪化してしまいます。乾燥がひどくなれば、当然ストレスも増え、悪循環に陥りかねません。
2. 体内での炎症の増悪
ストレスは、体内の炎症反応にも影響を及ぼします。免疫細胞のバランスが崩れ、病気の原因となっている炎症が悪化することで、全身性の倦怠感や関節の痛みといった症状が強くなることがあります。
倦怠感・慢性疲労を乗り切るための3つのヒント
シェーグレン症候群と診断された方が、この「見えない疲れ」と上手に付き合っていくために、日常生活で取り入れられる具体的な対策をご紹介します。
1. 「頑張りすぎない」スケジュール管理
「真面目な人」「几帳面な人」が発症しやすいと言われることもあるシェーグレン症候群。しかし、この病気と付き合う上で最も大切なのは、「無理をしない」ことです。
- 体力を回復させるための「お昼寝」を導入する
- 夜の睡眠を妨げないよう、午後早めの時間に15~30分程度の短い休息を意識して取り入れてみましょう。
- 活動と休息のバランスを見直す
- 家事や仕事、趣味などの活動を「細切れ」にして、間に必ず休息を挟むようにします。長時間続けて作業する習慣は、思い切って手放しましょう。
- 「今日は無理」と伝える勇気を持つ
- 体調は日によって違います。無理して人付き合いや予定をこなすのは避け、周りの人に正直に体調を伝える勇気を持ちましょう。
私は無理をしない、というのが最も苦手でもう少しできるかなと思ってしまう性分が災いしてこの病気になったんだなと思います。人生、最大限使いたいと思っていますから(笑)
IT業界に勤めていて、家で仕事をすることが多いので、夜7時を過ぎたら「今日の仕事は終わり」と諦めるようにしています。
2. ストレスを和らげる「ルーティン」を持つ
ストレスをゼロにすることはできませんが、心と体の緊張をほぐすためのルーティンを持つことはできます。
- 入浴とストレッチでリラックス
- 熱すぎないお風呂にゆっくり浸かり、体を温めてリラックス。寝る前に軽いストレッチを取り入れると、筋肉の緊張が和らぎ、睡眠の質を高めやすくなります。
- 「適度な」運動を取り入れる
- 疲れているときに激しい運動は逆効果ですが、散歩、庭いじり、水泳など、伸筋を使うような軽い運動は、心身をリフレッシュさせるのに役立ちます。
3. 主治医・薬剤師に相談する
疲労が特に強い場合、炎症が悪化している可能性や、服用している薬が影響している可能性も考えられます。
- 倦怠感が続く場合は遠慮なく相談を
- 疲労感は「気のせい」ではありません。日常生活に支障をきたすほどの倦怠感がある場合は、我慢せずに主治医に症状を詳しく伝えましょう。
- 飲んでいる薬を確認してもらう
- シェーグレン症候群の治療薬以外に服用している薬(特に抗ヒスタミン薬など)が、副作用として口の渇きを強め、間接的にストレスを増やしている可能性もあります。薬剤師に相談して、薬との相性を確認してもらうことも大切です。
最後に
シェーグレン症候群と向き合うことは、自分の体と心の声に耳を澄ませる練習でもあります。
「見えない疲れ」と上手に付き合うには、完璧を目指さず、「これくらいの休息で今日の自分は乗り切れる」という妥協点を見つけることが大切です。無理せず、あなたのペースで、この病気と付き合っていきましょう。
