シェーグレン症候群の症状として、多くの方が関節痛を経験されます。特に夜から朝方にかけて痛みが強くなり、なかなか寝付けない、あるいは痛みで目が覚めてしまうという方も少なくありません。
私も1年近くひどい肩関節周囲炎と全身の関節痛を経験したのですが、「痛み止めに頼りたくない」と当時は謎に薬を飲まずに我慢していました。今となっては、それが質の高い睡眠をとることを妨げ、回復を遅らせていた可能性があることに気づきました。質の高い睡眠を取ることは、実は関節痛の改善にとって非常に重要です。
この記事では、なぜ睡眠が大切なのか、そして痛みを和らげて眠るための具体的なアプローチについて解説します。
睡眠不足が関節痛を悪化させる
関節痛が原因で眠れないと、体は「疲労」と「痛み」の悪循環に陥ってしまいます。特に重要なのは、睡眠中に働く「回復」のメカニズムです。
1. 炎症物質の調整と修復
シェーグレン症候群の関節痛は、慢性的な炎症が原因で起こります。炎症が強いと、サイトカインなどの炎症性物質が多く分泌され、痛みを強く感じさせます。
質の高い睡眠、特に深い眠り(ノンレム睡眠)の間には、体内で炎症を抑えたり、傷ついた組織を修復したりするホルモンが分泌されます。しかし、睡眠が妨げられると、この修復・調整のプロセスが十分に機能しません。結果として炎症性物質が優位な状態が続き、翌日の関節痛も悪化しやすくなります。
2. 痛みの「過敏化」を防ぐ
睡眠不足は、脳の「痛みの感じ方」にも影響を与えます。
十分な睡眠が取れないと、脳の活動が不安定になり、痛みを抑制する機能が低下します。これにより、実際は同じ程度の痛みであっても、脳がそれをより強く、過敏に感じ取ってしまうようになります。この状態を「痛みの過敏化」といい、これが夜間の軽い刺激でさえ強い痛みに感じて目が覚めてしまう原因の一つとなります。
しっかり眠ることで、この痛みの抑制システムが正常に働き、痛みの感じ方を穏やかにすることができます。
痛み止めを賢く活用し、睡眠の質を確保する
「痛いから眠れない、眠れないから痛みが続く」という悪循環を断ち切るために、痛みがひどいかたは就寝前の痛み止め(鎮痛剤)の服用は、非常に有効な選択肢です。
1. 医師と相談の上で、戦略的に服用する
痛み止めは、痛みを「根本から治す薬」ではありませんが、炎症を抑えて痛みを和らげ、「質の高い睡眠を取るためのサポート役」として極めて重要です。
夜間から朝方にかけて痛みが強くなる傾向がある場合は、医師と相談の上で、就寝前に効果が持続するタイプの痛み止めを服用することを検討しましょう。
- 目的を明確にする: 「痛みをゼロにする」ではなく、「痛みを和らげ、目が覚めずに朝まで眠り続ける」ことを目的にします。
- 服用タイミング: 医師の指示に従い、薬の効果がピークになる時間が、最も痛みが出る時間帯(就寝中~早朝)に重なるように調整します。
2. 眠りの確保が「関節の回復」に繋がる
痛み止めを飲んでぐっすり眠れた結果、身体は前述の修復プロセスをしっかりと実行できます。炎症のコントロールが改善し、痛みの過敏化も抑えられるため、長期的には痛み止めに頼る頻度自体を減らせる可能性もあります。
「眠るための痛み止め」は、回復を早めるための積極的な治療だと捉えましょう。
関節痛を和らげるその他のセルフケア
痛み止めに加えて、日常生活で取り入れられる工夫もご紹介します。
- 温める: 痛む関節を温める(温湿布、蒸しタオル、入浴など)と、血行が良くなり痛みが和らぎやすくなります。
- 寝具の工夫: 痛む関節に負担がかからない寝姿勢を工夫しましょう。例えば、膝の間にクッションを挟む、肩が痛む場合は抱き枕を使うなどで、関節の安定性を高めます。
- ストレッチ: 就寝前に軽いストレッチ(特に肩や股関節など、痛む部位の周辺)を行うと、筋肉の緊張が和らぎ、リラックスして眠りやすくなります。ただし、痛みが強い時は無理をせず中止しましょう。
肩関節周囲炎のストレッチについては、こちらのYou Tube動画が参考になると思いますので、ご紹介しておきますね。14分40秒あたりにストレッチの方法が掲載されています。
痛みを我慢し続けることは、心身ともに疲弊してしまいます。シェーグレン症候群と上手に付き合っていくためには、「質の高い睡眠」を最優先に考え、そのために必要なサポート(痛み止めなど)を躊躇なく活用することが重要です。
あなたの主治医と相談しつつ、一番あなたの体に合った「眠るための戦略」を見つけてくださいね。
これは私の間違った経験ではありますが、その学びがみなさんのお役に立てれば嬉しいです!
