エピソード3:執着を一つ捨てる

炎症を起こしている歯の治療 わたしについて

シェーグレン症候群と診断されてすぐ、私は歯の治療を始めました。実は、腸内環境について診てもらっていた自由診療のクリニックの先生から、シェーグレン症候群の原因のひとつとして歯茎の炎症が関係している場合もあると聞いたんです。(これは歯周病の原因となる細菌やその炎症物質が、全身に広がり、免疫システムに影響を与える可能性があるという考えに基づいているそうです。歯周病による慢性的な炎症が、全身の自己免疫疾患の発症や症状の悪化に影響を与える可能性は、専門家によっても言及されているようです。)

その話には心当たりがありました。

何年も前から、右の奥から2番目の、以前治療した歯の歯茎が腫れやすかったんです。海外出張などで長時間飛行機に乗ったりすると腫れることが多々ありました。かかりつけの歯医者さんにも「そろそろ治療した方がいい」と言われていましたが、私はずっと治療を避けていました。


なぜ歯を抜くことに抵抗があったのか

私には「80歳まで20本の自分の歯を維持する」という目標がありました。できるだけ自分の歯で美味しく食事をしたい、それは私が思い描くQOL(生活の質)の高い老後の理想の一部だったのです。そのため、この歯を抜くことに静かに抵抗し、治療から遠ざかっていました。

今思えば、適正に治療していればシェーグレン症候群を発症しなかったかもしれないと思うと、判断ミスだったなと思います。


痛みに耐えながらの治療

でも、このままでは歯一本どころではないと思い、思い切って治療に踏み切りました。当時は関節炎、易疲労感、体重減少、皮膚の白斑や赤い腫れなど、症状もひどく、できることはすべて試そうと考えていたんです。

エピソード1でご紹介した同居人はこれといって相談にも乗ってはくれませんでしたが、支えてくれていた彼氏も「どれが効いたか検証するより、まずは全方向から手を打って治すのが最優先だよ」と背中を押してくれました。その言葉に後押しされ、私は自分が調べて良さそうだなと思う治療を色々と試すことにしました。

懸案だった歯の治療を開始したところ、その歯は割れていて、歯茎はそれが理由で炎症していました。いうまでもなく抜歯することになりました。私の歯に対する執着はシェーグレンの症状の方が酷すぎて、全くないに等しい状況で「はい、抜いてください」とすぐに答えられる状態でした。

治療中はシェーグレン症候群による両肩の関節炎がひどく、正直寝ていられないと思いました。肩関節の痛みを和らげるために腕を胸の前で組み、肩がベッドに落ちないように必死でした。

歯は抜いて無くなり、歯茎も弱ってしまっているのでインプラントもできず、結局ブリッジをかけることになりました。治療は2ヶ月ほどかかりましたが、こうしてシェーグレン症候群の原因のひとつになりそうな歯の問題を解決することができたのです。